UoPeople顛末記

さて、2022年の9月に入学したアメリカのオンライン大学 University of the People("UoPeople") のBachelor of Science in Computer Science、だらだらと続けてきましたが2026年1月に必要な単位を取得してしまい、還暦目前にしてついに卒業となりました。良い機会なので振り返ってみます。

きっかけ

この年になってわざわざ大学で学ぶ必要は別にないのですが、次のような理由でUoPeopleに入学しました。

コロナで暇だった

暇でした。

英語の勉強をしたかった

日常からプログラミング関係の英語を読むのには慣れていますが、すこしぐらい書く練習をしたほうが良いと思っていました。大学でレポートなど書いて、先生に評価してもらえるなら良い勉強になるのではないかと期待していました。

英語で数学・歴史・哲学などの勉強をしたかった

プログラミングなどの技術書は英語でもそれほど苦労せずに読めますが、それ以外の、英語で書かれた小説などを読むと、専門用語以外の一般的な語彙や文化的な知識が足りなくて苦労します。もともと歴史などの人文系の本を読むのは好きなので、以前から英語で一般向けの本もちょっと読んでみたいと思っていました。しかし、普通に本屋通いをしていれば講談社学術文庫や中公文庫などの日本語の定番レーベルは目につきますが、海外の出版社となるとそういった土地勘が全くありません。そこまで積極的に勉強したいわけでもないので、手を出しかねていました。

入学してみて

私はコンピュータサイエンス科に入学しましたが、もともと私はこの方面では長いキャリアをもっており、新しく学ぶことはあまりありませんでした。もともと、この点では最初から期待しておらず、一般教養の科目を楽しみにしていたので別に問題にはなりませんでした。

実際にコースがはじまってみると、最初は宿題の多さに圧倒されました。ほとんどの科目では、毎週数十ページ以上の資料を読むことを要求され、500ワード程度のレポートを2〜3本提出する必要があります。2科目同時に受講していれば毎週5〜6本のレポートを書くことになるので、それなりに準備が必要になります。英語のレポートを書くのに慣れないうちは、結構大変でした。私の場合、一科目当たり5~10時間/週程度の時間がかかっていたと思います。

CS系の専門科目はほどほどにして、一般教養をのんびりやっていく計画でしたが、入学してほどなく Learning Pathway という 制度が導入され、指定された科目しか受講できなくなってしまいました。もし入学前からこの制度だったとしたら、最初から入学はしなかったと思います。この時点でだいぶやる気を失ってしまったのですが、途中でやめるのもアレなので、手っ取り早く卒業するために選択科目は他の教育機関で取得して、UoPeopleに単位移行しました。UoPeopleでは一科目あたり9週間の時間と20本近いレポートが必要ですが、オンラインで大学相当のコースを提供する Sophia Learningなどでは、簡単なオンラインのテストと短いエッセイだけで単位をとれてしまいます。

卒業してみて

ときおり中断をはさみつつ続けていた結果、三年とすこしで卒業となりました。最終成績は CGPA 3.90 となりました。なかなかの成績ではないでしょうか。

特に成果というのは感じていませんが、大量のレポートを乱造したので多少英語を書くのは上達したとは思います。ただ、現在はAIが長足の進歩を遂げたため、私程度の低レベルな英語能力はあまり役に立つスキルではなくなってしまいましたが。

それでも、仕事と関係なく、指示されたテーマで文章を書くというのはそれなりに面白く、定期的に課題として取り組むのは良い刺激になりました。それなりにきれいなレポートを書くために、必要もないのに図やグラフを作成したり、構文ハイライト付きサンプルコードを提出するための仕組みを作ったりと、いろいろ楽しめました。

英語による一般教養の獲得という目的は、あまり果たせませんでした。前述の通り、ほとんどの科目は単位移行でまかなってしまったためです。それでも数学系は受講したので、そちら方面の言い回しや用語はある程度すんなり理解できるようになりました。

UoPeopleはおすすめ?

さて、どうでしょう?何らかの事情で大学卒業資格が必要、ということであれば、選択肢として挙がるのではないでしょうか。他のオンライン大学と比較したことはありませんが、Sophiaなどの単位移行をうまく使えば、短期間で必要な単位を取得できます。

他の学科についてはわかりませんが、学位と関係なく、Computer Scienceを学ぶために入学するのは。。。どうなんでしょう?

まず、UoPeopleでのCSの勉強は、基本的に独学です。毎週、指定された資料を読み、レポートを書きます。クラスごとに担当インストラクターはいますが、積極的に何かを教えてくれることはありません。質問すれば教えてくれるのでしょうが、受講者側を引っ張ってくれる雰囲気はなく、在学中もそうしたやり取りはほとんど見かけませんでした。

レポートの採点は基本的にインストラクターではなく、同級生が行います。インストラクターが採点するレポートもありますが、特に建設的なコメントをもらったことはありません。私のようなナマケモノにとっては、定期的にテーマをだしてもらって書き物をするというのはなかなかありがたいことですが、そのためだけにUoPeopleに入学するのは酔狂でしょう。

また、科目によってはカリキュラムがあまりよくありません。独学であればしっかりした参考書籍が欲しいところですが、UoPeopleではテキストは無料となっています。これは、有料のテキストを無料で読めるのではなく、多くの場合インターネットで無料公開されている書籍や資料が使われます。数学やアルゴリズムなどの科目ではしっかりした無料の教科書があるので問題ありませんが、分野によってはそういった素材が乏しく、GeekforGeekなどの、SEO以外あまり取り柄のないサイトがテキストとして指定されていたりします。一部ではUoPeople独自の資料も作成されていますが、基礎的なPythonの説明で:

Pythonの変数は、一度代入すると別の型の値を上書きすることはできない

といった、突拍子のないことが書かれていたりもします。

一番困るのが、ほとんどのカリキュラムはおそらく2010年ごろに作成され、その後ほとんど改善されていないことです。歴史のある分野ならこの程度は問題になりませんが、新興のWebプログラミングなどの科目では厳しいです。Web プログラミングのテストでは、次のような問題が出ました:

現代の主要なWebブラウザは、Adobe Flashが最初から導入済みとなっている。○か×か?

普通であれば当然×ですが、おそらくこの問題は2010年ごろに作成されています。当時の状況を思い返してみれば、答えが○であることは明らかです。実際、正解は○で、私は2025年にもなってAdobe Flashのこと勉強させるのやめてもらえます?との憤りを抑え、このテストで満点を獲得しました。

ということで、プログラミングやコンピュータサイエンスを学ぶ、という目的であれば、UoPeople以外の手段も検討してみる価値があるのではないかと思います。

まとめてみると:

  • 学位が必要な人:あり
  • CSを体系的に学びたい人:ほぼ独学。残念なカリキュラムも。
  • 課題駆動で英語ライティング習慣を作りたい人:毎週、締め切りつきで2〜3本のテーマを出してくれる存在は貴重。しかし、8週間分で160ドルの費用がかかることを考えるとコスパはどうだろう?

という感じでしょうか

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